昭和41年、盛田は『学歴無用論』と題する著書を発表し、大センセーションを巻き起こす。
当時の日本では、学歴による区別が歴然としてあった(現在でもあまり状況は変わらないが)。高卒よりは大卒が優秀であり、二流大学出よりは一流大学を出たほうが優秀である、という考え方である。これに対し、盛田は異議を唱えたのだ。『学歴無用論』から、いくつかの文章を紹介しよう。
「いったい学歴とはどういう意味、価値を持つものなのか。会社は、激しい過当競争のさなかにあって、実力で勝負しなければならないというのに、そこで働いている人は、入社前に教育を受けた“場所”で評価されるというのは、どう考えても納得がいかない」
「その人が、どの大学で何を勉強してきたかは、あくまでもその人が身につけたひとつの資産であって、その資産をどのように使いこなして、どれだけ社会に貢献するかは、それ以後の本人の努力によるものであり、その度合いと実績とによって、その人の評価が決められるべきである」
「大学で教えている専門の学問が、どの程度まで企業の要求するものに役立つか、はなはだ疑問であるし、実際、学校では秀才だった者が必ずしも社会の俊才になるとは限らないのも、事実である」
「ソニー・マガジンズ 盛田昭夫語録より」