盛田は生来、前向きで明るい性格の持ち主である。学生時代も海軍時代も、そしてソニーを創立してからも、いくつもの問題に直面しながら、悲観的に考えたことは一度もなかった。いつでも、強い意志と努力により、壁を乗り越えてきたのである。そうした盛田の影響からか、ソニーという会社全体も明るく前向きなエネルギーに満ちている。
ところで、テクノロジーが進歩した現在であっても、地球上には様々な問題が山積みされている。そのことを悲観的に考える人も少なくない。こうした現状を、盛田はどう見ているのであろうか。
盛田は、人間のテクノロジーをもってすれば、解決できない問題はないと考える。例えば、飢餓の問題でもエネルギーの問題でも、人類のそれまでの経験からして、解決できない問題ではない。それを悲観的に考える方が問題なのであって、前向きに努力しさえすればどんな難問でも解決できるというのである。
“楽観主義“という言葉でイメージする、のんびりした方ではないのだが、とにかく落ち込んだり暗くなったりすることが全くない。「そんな暇はない」といつも楽しそうに世界中を飛び回っている。
盛田はその著者『MADE IN JAPAN』の一番最後の部分で、人類の未来は輝かしいものであり、その為には人類の努力が必要であることを力強く説いている。
「人類には輝かしい未来があると私は信じている。その未来には素晴しい技術の進歩が約束されており、それが地球上のすべての人々の生活を豊かにするものと信じている。(略)私は楽観主義者である。我々がそのためにベストを尽くして努力しさえすれば、平和で偉大な未来は必ずわれわれのものとなるだろう。このような世界が、もうすぐ目の前に来ていると私は確信している。われわれはその為に努力しているのだ。素晴しい挑戦ではないか。成功するかしないかは、ただわれわれの意志の強さと努力にかかっているのだ」
盛田には人を説得する強さと大きさがあるが、この文章にもそう信じさせる強さが感じられるのである。
「ソニー・マガジンズ 盛田昭夫語録より」