盛田は、明るくオープンな性格と出会いを大切にすることから、年齢や立場とは関係なく誰とでも友だちになることができる。それは周囲の人たちも驚くほどだ。盛田は2、3回会えば「あの人は知っている」、4、5回会えば「親しい」と表現する。それが自分だけで一方的に言っているのではなく、相手もそのように思っている。それはやはり人柄なのだろう。とにかく、顔と名前を覚えるのが早い。
「僕が友だちを紹介すると、次には僕以上にその人と仲良くなっておられる。それがひとりやふたりではなくて、いっぱいいるんですよ。『面白い人だな』って思ったら、自分のほうから積極的に友だちになろうと努める。地位とか年齢とか関係ないし、偏見が全然ない方なんです」(出井伸之 現ソニー社長)
盛田の交友関係は、国際派と言われるだけに国内だけに留まらない。特に盛田らしいと言えるのが、各国の要人との関係だ。デビッド・ロックフェラー(チェース・マンハッタン銀行元会長)とは、共同で著書を著している仲だし、キッシンジャーとは彼が大統領補佐官をしていた30年も前からの付き合いがある。彼らとはファーストネームで呼び合い、お互いの家に訪問し合う仲である。
政治家や実業家だけではなく、学者や芸術家などにも交友関係は及んでいる世界的指揮者である故カラヤンや、バーンスタイン、あるいはソニー・ミュージックの歌手たち、特にマイケル・ジャクソンは盛田と大変親しく、盛田をいつも“マイ・ティーチャー”と呼んで慕っていた。
さらに、こうした著名人だけではなく、盛田は毎日の生活の中で接する、ごく普通の人とも気さくに話し合う。遠山雅夫(現ソニー国際調査部課長)はニューヨークでこんな経験をしている。「ニューヨークの靴専門店で、店員からアキオモリタを知っているかと聞かれたことがあります。知っていると答えると、あの人はすごくいいアドバイスをくれたって言うのです。盛田が客としてその店に来たときに『これから日本人がニューヨークにたくさん来るから、トリプルAワイドという日本人に合うサイズを用意しておけ』と言ったそうです。その店はアドバイスに従って、日本人サイズをたくさん仕入れ、ずいぶんと儲けたらしいんです。それをうれしそうに話していました」
感じたままをストレートに相手に伝える。それも的確に。端的に。それが盛田らしさであり、盛田流の、相手を尊敬する方法なのだ。
「ソニー・マガジンズ 盛田昭夫語録より」